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がん治療に関わる社会保障制度・費用

がん治療で長期間仕事を休むとき、知っておきたい「傷病手当金」のこと

目次

    1. 長期にわたって仕事を休むとき
    2. 傷病手当金支給の4条件
    3. 傷病手当金が支給される期間
    4. 傷病手当金における、医学的治癒と社会的治癒の考え方
    5. 傷病手当金受給中に会社を退職する場合
    6. 傷病手当金の額と申請方法
    7. 雇用保険(失業保険)と傷病手当金について

がん治療で長期間仕事を休むとき、知っておきたい「傷病手当金」のこと

長期にわたって仕事を休むとき

傷病手当金(しょうびょうてあてきん)は、病気やケガによる休職で事業主や雇用主から十分な報酬が受けられない場合に受け取ることができる給付金です。

給付金は、1日あたりの収入の約2/3が支給され、支給期間は取得した日数の通算で1年6ヶ月です。

対象者は、会社員が加入している組合健保や協会けんぽ、公務員が加入している共済組合などの被保険者とその家族です。なお、自営業者などが加入している国民健康保険では基本的に受け取ることができません。

会社に勤めている人が病気で仕事を休む場合には、まず有給休暇や会社が設けているリフレッシュ休暇などの使用が一般的かもしれません。しかし、治療による通院や副作用などで働けない状態が4日以上続きそうな場合は、傷病手当金の利用を検討してみて下さい。
 

傷病手当金支給の4条件

傷病手当金を受け取るためには、以下4つの条件をすべて満たす必要があります。

●業務外の病気やケガであること
業務外の病気やケガであることが、傷病手当金の給付対象になります。通勤途中や業務中における病気やケガは、労働災害保険の給付対象になるためです。病気やケガについては、入院・通院だけでなく、自宅療養も含まれます。

●病気やケガで本来の仕事ができないこと
完全に働けず休業する場合以外にも、今まで従事してきた業務ができない状態も傷病手当金支給の対象になります。本来の仕事ができない「労務不能」の判定は、医師の意見やその他の条件を総合的に考慮して判断されます。

●労務不能の日が4日以上続くこと
傷病手当金を受け取るためには、仕事ができなくなった日から最初の3日間「待期期間」が必要になります。この3日間は本当に労務不能かどうかを見極めるための期間で、土日や祝日、有給休暇を含めることができます。

●給与の支払いがないこと
給与の全額または一部が支払われていた場合は、給付の対象にはなりません。ただし、支払われた金額が傷病手当金の額より少ない場合は、差額分が支給されます。


傷病手当金が支給される期間

傷病手当金が支給される期間は、支給開始日から通算して1年6ヶ月に達する日までです。なお、いくつかの注意点がありますので、解説します。

支給条件で紹介したように、最初の3日間は待期期間です。そのため、仕事ができなくなった日から4日目が支給開始日となります。

傷病手当金の支給期間は、同一の病気やケガに関する傷病手当金の支給開始日から通算して1年6ヶ月に達する日までが対象です。健康保険法等が改正されたことにより、2022年(令和4年)1月1日から支給期間が変更になりました。

以前の制度では、支給開始日から1年6ヶ月と「期間」が決まっており、通算はできませんでした。新しい制度では、支給開始日から「通算」で1年6ヶ月に達する日までが対象になったので、より自分の体調に合わせた働き方がしやすくなりました。

たとえば、病気などで休職して一度復職しても、その後ふたたび休職する場合も考えられます。以前は、傷病手当の受給期間の1年6ヶ月は働かずに治療に専念した方が良かったかもしれません。今回の変更により、「働けるときは働く」「様子見で働く」といった働き方も視野に入れることができます。
また、2020年(令和2年)7月2日以降で申請した方で、まだ1年6ヶ月経過していない方もいるかもしれません。そのような方も、2022年(令和4年)1月1日以降に残っている期間については、新制度の対象になります。

たとえば、2020年(令和2年)7月2日に初めて申請をし、治療などで100日間制度を利用した人は、1年6ヶ月分:180日-制度利用した100日=80日間が今後利用できることになります。


傷病手当金における、医学的治癒と社会的治癒の考え方

傷病手当金は1つの原因に起因する傷病に対して支給されます。たとえば乳がんで傷病手当金を受給しながら休職し、復帰後に再発し、再び休職した場合を想定してみます。医学的には、転移・再発は同じ病気として定義されます。

しかし「社会的治癒」の考え方は、最初の乳がんが治癒して仕事に復帰したが、その後に再発した場合は、別の病気として取り扱うというものです。また、別の病気と判断された場合は、前の支給期間は関係ありません。改めて傷病手当金の支給期間が設けられます。

「社会的治癒」については判断の分かれるところもあります。しかし、とても大切な問題ですので、がん相談支援センターや患者会などでの相談をおすすめします。


傷病手当金受給中に会社を退職する場合

傷病手当金を受給している期間に解雇や休職期間満了によって退職になることもあるかもしれません。退職すると健康保険の資格を失いますが、傷病手当金の支給は退職後も継続して受けられます。

ただし、被保険者期間が1年未満の場合は、退職の日をもって傷病手当金の支給は打ち切りとなりますので、1年以上の被保険者期間を確保できるよう、会社と話し合うのもひとつの手です。


傷病手当金の額と申請方法

傷病手当金の計算方法と申請方法について解説します。

例:月収30万円の人が、40日間休職した場合。

1日あたりの収入 30万円 ÷ 30日 =1万円
1日あたりの傷病手当金 1万円 × 2/3日=6,667円
この期間の支給額 6,667円 × (40日-3日*) =24万6,679円

*待期期間の3日間

実際には、健康保険制度で用いられている「標準報酬月額」に基づいて算出されます。

傷病手当金の申請をする場合は、まずは職場の担当窓口に問い合わせてみましょう。全国健康保険協会(協会けんぽ)の場合は、各都道府県の窓口でも申請することができます。

なお、全国の健康保険協会支部の所在地については、「全国健康保険協会支部(協会けんぽ) (外部サイト)」で確認できます。

また障害年金との併用については、受け取れる金額によって判断がわかれますので、加入している保険組合、または都道府県の窓口で相談をしてみてください。


雇用保険(失業保険)と傷病手当金について

病気治療のために退職せざるを得なくなった場合、雇用保険(失業保険)から支給される「失業給付の基本手当」と傷病手当金は同時に受け取れるのでしょうか。

結論から述べると、失業給付の基本手当と傷病手当金を同時に受け取ることはできません。

基本手当は、「働ける状態の人」が求職している間の生活保障として支給される手当です。病気の治療のためにすぐ働けない場合は、失業給付の対象となる「失業」とは認められないので、基本手当を受け取ることができません。

失業給付の基本手当の受給期間は、離職後1年間なので、受け取れないまま期間が終わってしまう可能性があります。ただし、病気などの理由で継続して30日以上働けない場合は、受給期間の延長手続きの申請をしましょう。

申請をすることで、基本手当の受給期間は失業から最大4年まで延長することが可能です。

なお、30日以上働けなくなった場合は、できるだけ早く延長の申請を行うことをおすすめします。受給期間延長の申請が遅い場合は、申請を行っても基本手当の所定給付日数のすべてを受給できない可能性があるためです。

延長をするには、ハローワークで届出を行う必要があります。その際、診断書などが必要になりますので、事前に用意しましょう。

全国のハローワークの所在地については、「全国ハローワークの所在案内(厚生労働省)(外部サイト)」で確認できます。

Hatch Healthcare K.K.

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