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がん治療に関わる社会保障制度・費用

がんの治療にかかる費用を抑えられる「高額療養費制度」とは?

目次

    1. 医療費の自己負担を軽くする「高額療養費制度」とは
    2. 「限度額適用認定証」の活用
    3. 申請の手続きと注意事項
    4. 高額療養費制度の応用編
      1. 高額療養費貸付制度
      2. 高額医療・高額介護合算療養費制度

がん治療にかかる費用を軽減する高額療養費制度

医療費の自己負担を軽くする「高額療養費制度」とは

日本の医療制度では、個人の医療費負担を軽減する仕組みが整備されています。がんとわかったばかりのうちは“治療費っていくらかかるのだろう……”と、お金について不安が募るかもしれませんが、しっかり情報を集めて対応していきましょう。今回は、そうした制度のひとつ、「高額療養費制度」について紹介します。

「国民皆保険制度」を導入している日本では、原則すべての国民が公的医療保険に加入しています。そのため、通常はかかった医療費のうち3割(※1)のみが自己負担となっています。

たとえば、手術による入院で1ヶ月の医療費が100万円かかったとしたら、病院の窓口での支払いは30万円になります。3割ですんでいるとはいえ、30万円の出費はかなりの額です。こうした高額の自己負担をサポートするのが「高額療養費制度」です。個人の年収によって金額は異なりますが、限度額を超えた支払いに対して、その超えた分が払い戻される制度です。

70歳未満で、中程度の収入(年収約370万~約770万円)の人が入院し、医療費が100万円かかった場合、支払わなければいけない医療費の「自己負担限度額」は8万7,430円です。病院の窓口で30万円支払った場合、自己負担限度額を超えた21万2,570円が高額療養費として払い戻されます。

高額療養費制度には「合算」などの制度があり、自己負担をさらに軽減することもできます。

●自己負担額の合算
70歳未満では、同じ月内に複数の医療機関(入院と外来、医科と歯科の場合も含む)で、それぞれ2万1,000円以上支払った場合、70歳以上では金額にかかわらず合算して申請することができます。

●世帯合算
同じ医療保険に加入する家族(被保険者と被扶養者)のなかで、それぞれ2万1,000円以上の支払いがあった場合には合算が認められます。ただし、夫婦など家族でも異なる医療保険に加入している場合は合算できません。

●多数回該当
過去12ヶ月以内に3回以上自己負担の上限額に達した場合は、4回目から「多数回」該当となり、さらに上限額が下がります。

年収や年齢による限度額と計算方法について、詳しくは「高額療養費制度を利用される皆さまへ(厚生労働省保険局)[pdf] (外部サイト)」をご覧ください

※1:一定の所得がある場合を除き70~74歳は2割、75歳以上は1割の負担。また、6歳(義務教育就学前)未満は2割の負担。
 

「限度額適用認定証」の活用

高額療養費制度の払い戻しは、申請してから約3ヶ月後。あとから払い戻されるとはいえ、一時的な支払いは大きな負担にもなります。あらかじめ申請をしておけば、外来診療時や退院時の窓口の支払いを自己負担限度額だけで済ませることができる制度があります。それが、「限度額適用認定証」です。

なお、70歳以上であれば、「高齢受給者証」もしくは「後期高齢者医療被保険者証」を提示すれば、同じように窓口の支払いを限度額だけで済ませることができます。


申請の手続きと注意事項

「高額療養費制度」と「限度額適用認定証」発行の申請窓口は、みなさんが加入している公的医療保険の窓口になります。

企業に勤めている人であれば各社の健康保険組合の担当部署、自営業など国民健康保険に加入している人であれば各市区町村の窓口が申請先になります。自治体のサイト内で、「高額療養費制度」で検索してみると概要が把握できます。

なお、「高額療養費制度」と「限度額適用認定証」の活用にはいくつかの注意点があります。

●差額ベッド代、食費、先進医療などにかかる費用は対象にはなりません。

●この制度は暦月(こよみづき:月の初めから終わりまで)ごとの適用になります。同じ15日間の入院でも、同じ月の1日から15日まで入院した場合と、20日から翌月5日まで月をまたいで入院した場合とでは自己負担額が異なります。月をまたいだ後者の方が、自己負担額が大きくなります。

●高額医療費制度で払い戻しが申請できる期間は、診療を受けた月の翌月の初日から2年間です。はやめに手続きを済ませておくとよいでしょう。過去のものでも、2年間の内であればさかのぼって支給を申請することができます。

●限度額適用認定証の有効期間は、申請書を受けた日の属する月のはじめから、最長で1年間です。

●保険診療と自由診療を併用する「混合診療」は、原則3割負担が適用されません。


高額療養費制度の応用編

高額療養費貸付制度

高額療養費は手続きをして払い戻しまで3ヶ月ほどかかります。そこで、その期間支給見込み額の8~9割程度を無利子で貸付するのが「高額療養費貸付制度」です。適用されれば、健康保険組合などから直接医療機関にお金が支払われます。3ヶ月後には、貸付されなかった残高(医療費の1~2割)が個人に支給されます。

高額医療・高額介護合算療養費制度

要介護の家族がいる場合、経済的負担を軽減するために、1年間に支払う医療費・介護費の自己負担額の合計に限度額が設定されます。この制度は、1ヶ月ごとではなく、1年間(毎年8月1日~翌年7月31日)の医療費と介護費の合計金額から計算します。

今回ご紹介したように、高額療養費制度や高額療養費貸付制度は、がんに罹患した際の自己負担を軽減するのに役立つ制度です。しかし、申請から払い戻しまでに時間がかかることが一般的ですので、その点に注意が必要です。

Hatch Healthcare K.K.

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