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がん治療中にうつになってしまったら?

目次

  1. 専門家による心のケア
  2. どんな時に専門的なケアが必要?
  3. 具体的なケアの方法

がん治療中にうつになてしまったら?
専門家による心のケア

不安や落ち込みが続いている、眠れない、食欲がないなど、精神的、身体的につらいときには、心のケアの専門家に相談することをお勧めします。心の専門家の支援を受けることに抵抗を感じる人もいるかもしれませんが、心のつらさをなくすことは、がんの治療と同じくらい大切なことです。ケアを受ける時期が早いほど、気持ちが早く楽になって治療に対しても前向きになれるでしょう。

時々、「気持ちのことまで相談するほどではない」などと頑張りすぎている自分に気が付かない場合もあります。思い当たることがあれば、まず担当医や看護師に相談してみましょう。担当医は患者さんの状況をみて、必要があると判断すれば心の専門家を紹介してくれます。専門家による支援の希望を直接担当医や看護師に伝えてもいいでしょう。また、患者さんだけでなく、一緒につらい思いをしている家族も心のケアを受けることができます。

どんな時に専門的なケアが必要?

・適応障害
適応障害(てきおうしょうがい)とは、心理的なストレスによって、日常生活に支障が出るほどの不安や、気分が落ち込んだ状態である「抑うつ状態」、あるいは行動面に問題がおこるものをいいます。不安で眠れなかったり、仕事が手につかなかったり、人と会うのが苦痛で自宅に引きこもったりしてしまう人もいます。

・気分障害(うつ状態)
気分障害、いわゆる“うつ病”は、適応障害よりもさらに精神的な苦痛が大きい状態です。身の置きどころがない、何も手につかないといった落ち込みが2週間以上続き、日常生活を送るのが難しくなります。脳の中で感情をつかさどる機能が過熱、摩耗し、過労を引き起こしています。不眠、食欲不振、性欲減退といった症状が強くなる人も少なくありません。「消えていなくなってしまいたい」などと、自身に否定的な感情を持つ人もいます。ケアには、カウンセリングや薬物療法などがあります。

・せん妄
一時的に意識障害や認知機能の低下が起こることを「せん妄」といいます。脳機能の障害によるもので、手術後やがんの病状が進行したときになど、身体状態が不安定なときに生じます。何らかの原因で脳機能が低下して意識が混濁(こんだく)し、幻覚を見る、つじつまの合わないことを言ったり、行なったりするなどの認知障害をともないます。治療薬としては抗精神病薬が使われます。

・せん妄、家族としてどう対応したらいい?
せん妄状態の患者さんは今までとは様子が一変することがあるため、そばで見ている家族もつらい思いをすることがあります。そんな姿は見たくないと思われるかもしれませんが、不安な思いをしている患者さんは家族がそばにいるだけで安心します。つじつまの合わない話も否定せず、いつも通りに声かけをしたり、カレンダーや時計を目につくところに置いたりするなどの対応を。患者さんの代わりに医師や看護師と治療やケアについても話し合うようにしましょう。

具体的なケアの方法

・ケアにあたる人
心のケアの専門家とは、「精神腫瘍医(せいしんしゅようい)」「心療内科医」「精神科医」といった心の問題を専門とする医師と、カウンセリングや心理検査の専門家である「心理士」「精神看護専門看護師」といった看護師を指します。なかでも精神腫瘍医は、がんに関連した心の問題のケアを専門にしています。日本ではまだ少ないのですが、少しずつ増えてきています。

専門家による心のケアは、カウンセリングや薬物療法が中心です。専門の医師によるカウンセリングや薬物治療の費用は公的保険が適用されます。医療機関によっては無料で心理相談を受けているところもあります。

・カウンセリング
専門家による心のケアの基本は「カウンセリング」です。カウンセリングは、患者さんが心のケアの専門家と不安や落ち込みについて話すことが中心になります。言葉にすることで気持ちが楽になり整理がついたという経験を持つ人も多いようです。また、がんと心の状態についての理解を深めることで、誤った理解からくる心配や、つらい気持ちが和らぐこともあります。

カウンセリングでは、たくさん話をすることが治療の成果になるわけではありません。患者さん自身のペースで話すことが大切です。話題は治療のこと、家族のこと、仕事のことなど身近なことが中心で、その人のペースに合わせてゆっくりと話を聞いていきます。診療中に話した内容がほかの人に知られることはないので、安心して話しても大丈夫です。

・リラクゼーション
「リラクゼーション」とは自分の心身を意識的にリラックスさせる方法です。リラックスした状態を得ることで、不安・緊張感を和らげる、寝付きをよくする、痛みを間接的に軽くするなどの効果が期待できます。リラクゼーションは、心のケアの専門家など経験のあるスタッフの指導で行います。少し練習が必要ですが、一度覚えるとひとりでいつでもどこでも行うことができるようになります。

・薬物療法
症状に応じて以下のような薬を処方しています。その場合、どのような種類のものが適当か、医師が患者さんの状態や副作用を考えて安全に使用します。

・薬の効果と副作用
睡眠導入剤…「なかなか寝付けない」「早朝や夜中に何度も目が覚めてしまう」などの症状を改善します。副作用として、日中の眠気、ふらつき、足腰に力が入りにくいなどの症状が報告されていますが、ほとんどの場合、薬の種類や量を調整することで改善できます。

抗不安薬…「不安で落ち着かない」「考えたくないことが頭から離れない」「胸がどきどきする」「不安で息苦しくなる」などの症状を和らげます。睡眠導入剤と同様の副作用がありますが、やはり薬の種類や量を調節することで改善します。

抗うつ薬…「気分が落ち込む」「何をしても楽しめない」「気力が湧かない」「体がだるい・重い」「食欲がない」などの症状を改善します。薬の効果はゆっくり表れますが、早期から副作用が生じることがあります。軽い眠気、喉(のど)の渇き、便秘、立ちくらみ、胃の不快感などの症状が比較的よくみられる副作用ですが、服用を始めて数日で慣れることが多いので、症状が軽ければそのまま服用を続けて様子を見ましょう。一部の抗うつ薬ではまれに不整脈が報告されていますので、脈の乱れや動悸(どうき)がある場合には医師に申し出るようにしてください。

【参考文献】
「国立がん研究センターのこころと苦痛の本」(小学館)
国立がん研究センターウェブサイト「がん情報サービス」(外部サイト)
※別ウインドウで開きます

Hatch Healthcare K.K.

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