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がんについて知る

メンタルケアについて知る

がんと診断されたあとの気持ちの変化とメンタルケア

目次

  1. がんと無関係でいられる人は少ない
  2. がんを告知されたとき
  3. 「レジリエンス」とはしなやかな心のあり方
  4. 心のケアの専門家に
  5. 退院・通院治療を始めたとき
  6. 転移・再発を知らされたとき

がんと診断されたあとの気持ちの変化とメンタルケア
がんと無関係でいられる人は少ない

最新の統計では、2人に1人はがんを経験する時代(※1)です。がんはすべての人にとって他人事ではない病気といえるでしょう。家族や身近な人も含めれば、いまやがんと無関係でいられる人は多くはありません。

また、近年の医療の進歩によって、がんは必ずしも不治の病ではなくなりました。それでも生命をおびやかす病気であることにはちがいなく、がんを発症した人は多かれ少なかれ、心の苦痛に見舞われます。

※1:生涯においてがんになる確率は男性:62%、女性:47%(がんの統計‘17公益財団法人がん研究振興財団)


がんを告知されたとき

がんと知らされると、多くの人は心に大きなショックを受けます。「まさか自分ががんにかかるわけがない」「きっと何かの間違いだ」というように、自分ががんにかかってしまったことを認めたくない気持ちを持つ人がほとんどでしょう。しかし、そういう気持ちになるのは心が弱いからというわけではありません。大きな衝撃から心を守ろうとするごく自然な反応なのです。

「自分だけがこんな目に遭うなんて理不尽だ」「何も悪いことをしていないのに、なぜだ」「健康には誰よりも気を遣ってきたのに」などと怒りを感じる人や、「これまでの不摂生がいけなかったのではないか」「人間関係のストレスのせいだ」「仕事ばかり優先しすぎたせいだ」などと自分を責める人もいるかもしれません。

次の段階になると、将来についての漠然とした不安を感じる、一日中気分が落ち込む、夜ぐっすり眠れない、食欲がないというような症状が表れ、人によっては一時的に日常生活に支障が生じることもあります。さらに「周囲の人にはわかってもらえるわけがない」「辛いのは自分1人だ」などと疎外感や孤立感を感じることがあります。この時期には不安や落ち込みなどの心の苦痛と、それに基づく睡眠障害などの症状が表れやすくなります。

「レジリエンス」とはしなやかな心のあり方

やがて、こうした心の困難を乗り越え適応しようとする力が働き出します。これは、人間が本来持っている力で、つらい状況にあっても、少しずつ現実を受け入れて適応することが可能になり、落ち着いて物事に目を向けることができるようになります。こうなると、がんについて調べたり、治療に前向きに取り組もうと考えたりするようになるのです。

また、仕事や家事・育児など目の前にあるタスクについても、現実的な処理ができるようになり始めます。通常は、がんの告知を受けてから2週間程度で、このような再適応の時期を迎えることができるようになるといわれています。(図1)

このような、悩みや苦しみに向き合う力を「レジリエンス(resilience)」と呼びます。レジリエンスはもともと物理学などの用語で、日本語に訳すと「可塑性(かそせい)」、つまり「元に戻る」ことを表わす言葉です。ちょうど柳が風を受け流すような、しなやかな心のあり方を指しています。

心のケアの専門家に

しかし、人によっては告知されてから2週間を過ぎても落ちこみや不安がひどく、問題に対処するどころか、ふだんの生活を再開できない場合があります。あまり落ち込みが長く続く場合は「適応障害」や「気分障害(うつ状態)」の可能性があるので、専門的な心のケアが必要です。まず担当医や看護師に相談をして、心のケアの専門家を紹介してもらうといいでしょう。

図1 がんと告知されてからの心の反応
  がんと告知されてからの心の反応
(国立がん研究センター がん情報サービスHP資料を元に作成)

退院・通院治療を始めたとき

これまでは治すために治療に邁進していた患者さんが社会生活に戻る、治療をしながら家事をやり治療や家庭での役割、仕事・・・と病気になる前の役割に、病気を治療するという大きな役割が増えます.そこに不安だけでなく、これまでのようにできない喪失感や焦燥感を抱く患者さんは少なくありません。

入院治療が終了して、自宅で経過観察または通院治療を開始するときも、心配なことが多いでしょう。体力の低下を痛感したり、副作用の心配や転移・再発への恐れ、入院中と違って担当医や看護婦にすぐ相談できない不安などにおそわれるかもしれません。

そのような時は、親しい人との時間をもつ、担当医や同病者とコミュニケーションをとる、地域のサロンや患者会情報を「がん相談支援センター」に尋ねてみる、趣味を楽しむことなどで気持ちを立て直すのもいいでしょう。

転移・再発を知らされたとき

治療後の経過観察を続けている時、あるいは治療からだいぶ時間がたった段階で、がんの転移・再発が見つかることがあります。多くの人は、最初のがんの告知以上にショックを受けます。転移や再発は誰のせいでもありません。それまで一生懸命考えて治療に専念してきたのですから、自分や誰かを責めないようにしましょう。まずは心の深呼吸をして、これから先、心のケアも含めて、担当医や看護師、家族とゆっくり相談をしてみましょう。治療や療養に関してきっと自分らしい選択ができるでしょう。

【参考文献】
「国立がん研究センターのこころと苦痛の本」(小学館)
国立がん研究センターウェブサイト「がん情報サービス」(外部サイト)
※別ウインドウで開きます
 

Hatch Healthcare K.K.

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