※本記事は、患者さんの体験談であるため、具体的な病状や治療法なども出てきますが、あくまでも個人の例であり、病状や治療効果は、個人差があります。すべての患者さんへ適応できる状況、効果を示すものではないことを了承ください。
手術したいのに咳が止まらない。2か月間の焦りと検査のつらさ
確定診断を受けたクリニックから紹介されたのが、持病で長年お世話になっているかかりつけの総合病院でした。紹介先の候補の中にその病院があり、迷わずそこを選びました。
かかりつけの医師から院内の消化器外科医について「信頼できる先生だよ」と教えてもらっていたこともあり、安心感が生まれました。
8月中旬、初めて消化器外科を受診した日は、診察室で先生と向き合った瞬間、頭が真っ白になってしまいました。
いろいろ聞くことを考えていたはずなのに、聞けていないことだらけになりました。
夫からも「あれ聞いた?これ聞いた?」と言われ、その次の診察からはメモを持っていくことにしました。でも、メモを持っていっても先生の前に座ると「こんなこと聞いたら変に思われるかな」「どこまで聞いていいんだろう」という気持ちになって、結局全部は聞けないんです。
外来での診察はそういうものなのかもしれません。
それでも、あらかじめ聞きたいことを書き出してメモを持参するほうがいいと思います。
その受診で提示された治療方法がロボット支援手術でした。
ロボット支援手術と聞いてもイメージがつかめず、最初は怖いと思いました。けれど、主治医から図を使ってS状結腸の切除部位や、ロボット支援手術と開腹手術の違い、それぞれのメリットとデメリットについて丁寧な説明を受けた結果、納得することができました。
「少し穴を開けるだけで、お腹をパカッと開く手術より体への負担が少ない」と聞いて、手術そのものに対して大きな不安は抱えずにいられました。
手術が決まってから実際に受けるまでには、約2か月かかりました。
病変を採取した位置が特定できず、大腸内視鏡検査を合計3回受けることになりました。検査のたびに前日から食事制限があり、当日には2リットルほどの下剤も飲まなければなりません。度重なる検査で体重が一気に落ちました。
さらに、この時期は咳が続いて喘息気味になり、夜も眠れない日が続きました。
検査と並行して呼吸器内科にも通うことになり、体も気持ちもいっぱいいっぱいでした。早くがんの治療を進めたいのに、咳が出ている間は全身麻酔の手術を受けられません。
「咳が治らないと手術できない」という状況が焦りになり、精神的に落ち込んだ時期でもありました。
仕事については、職場への伝え方に迷いました。もともとパートで働いていましたが、ちょうど母の体調が優れずその対応で休みがちになっていた時期と重なり、病名は伝えずに退職という形になりました。
ただ今思えば、職場にきちんと病名を伝えて治療後に働けるよう相談していたら良かったかなと少し後悔しています。
とても好きな仕事で働きやすかった半面、通勤に時間がかかり、結果的に今は子どもの学校の事情等から働き続けることは難しかったのですが、それでも相談してみることは大切だったかな、と思っています。
がんになった時、仕事をどうするかということは現役世代では大きな課題だと、私自身が実感しています。

「ばいばーい」と送り出してくれた息子が、夜に泣いていた
確定診断が出た後、息子の預け先の確保など協力が必要になり、両親にも病気のことを伝えました。
母はその頃、精神的に体調を崩していたため、伝えるかどうか迷いました。でもいつまでも黙っているわけにもいかない。がんと診断されたと話すと、ひどく落ち込んでしまいました。
それでも、娘を支えなければという気持ちが芽生えたのか、それまで落ち込み気味だった母が少しずつ元気を取り戻していきました。
息子への告知は悩んでいました。
それまでほとんど一緒に寝ていて、一人で泊まりに行ったことも数えるほどしかなかった息子に、どう伝えるか。
ある日、母と病気や入院のことを話していたのですが、息子には聞こえていないと思っていたんです。ところが全部聞いていたようで、「ママ入院するの?」「手術って大変なの?」と不安げな表情で聞いてきました。
これはちゃんと説明しなければと感じ、どんな病気か、なぜ手術をするのかをできるだけ具体的に話しました。
ロボットアームを使って手術することを絵に描いて伝えると、「ロボットってすごいね」とそちらに興味が向いたようでした。
「少し穴を開けるだけで、お腹を切るわけじゃないから大丈夫なんだよ」とも説明しました。
話し終えたころには「そんなに大変なことじゃないんだね」とほっとした顔をしていて、「入院中は会えないけど、ママはママで頑張ってね」と言ってくれました。その言葉が、治療中の大きな励みになりました。
子どもに病気のことを伝えるとき、詳しく説明することで怖くなってしまう子もいると思います。
でも息子の場合は、具体的に伝えることが不安の解消につながりました。子どもの性格や年齢によって伝え方は違うと思いますが、親が思っているより子どもはちゃんと受け止めてくれるかもしれません。
入院の日、息子を実家に預けるために家族そろって向かいました。
「パパは帰ってくるけど、ママは今日から入院するよ」と改めて伝えて別れたのですが、息子はまだ実感が湧いていなかったのか「じゃあね、ばいばーい、いってらっしゃい」とあっさりしたものでした。私のほうがもう少し寂しがってくれてもと思うくらいで。
でも夜になって私が帰らないと分かったとき、「ママに会いたい」と泣いていたと後で夫から聞きました。
入院中にテレビ電話で話すと、最初の2日ほどは寂しいと言っていましたが、その後は電話してもあっさり切られてしまうくらい、元気にやっていたようです。子どもの適応力に、助けられました。
入院中、夫は在宅勤務をできるよう会社に調整してもらいながら、病院の送迎が必要なときには有給休暇を取って対応してくれていました。
調整が大変だったことを後から聞いて、どれほど無理をさせてしまったかと思いました。それでも会社が柔軟に対応してくれたことは、本当にありがたかったです。